fallingchildren

油画
66×53

人間だから堕ちるのであり、
生きているから堕ちるだけだ。

だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。
なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くでは有り得ない。

人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、
堕ちぬくためには弱すぎる。

人間は結局
処女を刺殺せずにはいられず、
武士道をあみださずにはいられず、
天皇を担ぎださずにはいられなくなるであろう。

だが他人の処女でなしに自分自身の処女を刺殺し、
自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、
人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。
そして人の如くに日本も亦堕ちることが必要であろう。

堕ちる道を堕ちきることによって、
自分自身を発見し、救わなければならない。

堕落論 - 坂口安吾