砂漠

茫漠とした砂漠に 雨が降る.

きっとここは 幾世紀も前からずっとずっと砂漠だった場所.

君が降らせた数滴の光は 涙という形を取らずに,硬直して風化した砂の間隙に染み込んでいった.

そこには永遠の無理解と100年の孤独と,もうほとんど忘れかけている水への渇望があった.

砂漠はあまりにも長い間乾き続けてきたために,自分が水を欲していたのかさえ覚えていなかった.

一瞬,自らが浴びた艶やかな冷たさが水であることにさえ気付かずに,長い眠りから覚める直前のまどろみに身を任せていた.

与えられ続けるものではない とわかっていながらも,その水が描いた染みは乾ききった砂漠を とても優しい気持ちにさせた.

もう次はないだろう という諦めと潤いから目を背けられない自己の弱さと,しかし今確実に水がその身を伝っている という歓喜を味わっていた.